白内障治療
患者さんの状態に合わせた個別治療
白内障治療、いつ始める?
よく患者さんから、手術はもうしたほうがいいですか?と聞かれます。
白内障の症状は主に見えづらくなる場合と、まぶしく感じる場合があります。
このような症状が、日常生活で気になるようになったら手術の頃合いですよ。
とお話しすることが多いです。
このため、手術を受けられる患者さんの視力は様々ですが、免許をもって運転されているような場合は、視力が免許の基準である0.7を下回るようでしたら、手術をお勧めします。
また初期の白内障であれば点眼で進行を遅らせることもできますので、しばらく点眼で様子をみられる方もいらっしゃいます。
また、時には白内障手術が非常にチャンスとなる場合があります。
この場合は私から手術することによるメリットが大きいとお勧めします。
これは今まで非常に強い近視でハードコンタクトレンズがないと生活できなかった方が裸眼で生活できるようになったり、左右の度数差が大きかった方が手術によってそれがなくなるような場合です。
白内障の個別治療とは
私が以前から提唱している白内障の個別治療(カスタム治療)についてご説明します。
名前だけ聞かれると、特別な白内障手術に思われるかもしれませんが、私がこうあるべきと思う白内障手術を体系化したもので、だれでも手術を受ける事が可能です。
まず、これには大きく分けて2つの柱があります。
1つは患者さんの目の状態に合わせて手術方法を選択する点です。
2つ目は患者さんの目の状態やライフスタイルに合わせて眼内レンズを選択する点です。
白内障手術は現在、非常に安全な手術になったと言われますが、眼科相談室やセカンドオピニオンで来院される術後患者さんは様々な問題点を抱えていることが多いです。
そして、その多くは画一的な手術により患者さん自身の状態の把握が不十分であることが多いように感じています。
1. 患者さんの目の状態に合わせた手術方法の選択
まず、術前の検査でドライアイが合併していないかチェックします。
最近はドライアイがあると術後見え方が悪くなったり、視力の回復が悪いことが指摘されています。
ドライアイ以外の眼表面の状態のチェックも重要です。
アトピーや円錐角膜、レーシック後などは、手術の際に作成する切開が非常に重要になります。
次に目の中の状態のチェックです。
白内障手術は目の中の水晶体の濁りを取り除く手術ですが、濁りの周りの透明の袋(水晶体嚢、すいしょうたいのう)は残して、そこに眼内レンズを挿入します。
水晶体の濁りがひどいと硬くなったり、真っ白の液状に変化したりします。
このような状態の方は、水晶体の袋も弱っていることが多く、手術の際に破れたり、一部が眼球の壁から剥がれてしまったりして眼内レンズが入らなくなってしまうことがあります。
このようなリスクに備えて、リスクがある場合は手術中に水晶体の袋をサポートしながら手術する器具を準備します。
あまりにも水晶体が濁って硬い場合などは、レーザーであらかじめ砕いてから濁りを除去するほうが安全で短時間で手術を終えることが可能です。
2. 患者さんの目の状態やライフスタイルに合わせた眼内レンズの選択
▶単焦点か多焦点か?
白内障手術では、濁った水晶体を取り除きその代わりに眼内レンズという人工のレンズを入れます。
眼内レンズの選択は術後の状態に大きく影響を及ぼすもので、その選択は非常に重要になります。
また一度入れてしまうと、コンタクトレンズのように取り替えがすぐにはできませんので、慎重に考える必要があります。
現在は、いろいろなタイプの眼内レンズがあります。
まず、大きく分けて単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズがあります。
単焦点眼内レンズの中には、乱視ありと無しがあります、乱視が強い患者さんでは、乱視矯正ありの眼内レンズを使用することによって術後、眼鏡無しでの視力が非常によくなります。
また、単焦点でも、左右どのような度数に合わせると、その患者さんが一番快適に過ごせるようになるのか、乱視はどの程度矯正する必要があるのかなども含めて検討します。
▶多焦点眼内レンズのメリットとデメリット
多焦点眼内レンズについてですが、患者さんとお話ししていると、多焦点眼内レンズが常に単焦点眼内レンズより優れていると考えられている方が多いように思います。
まず覚えておいて欲しいのは、全ての人にとって多焦点眼内レンズがベストでは無いということです。
私の患者さんで印刷関係の仕事で非常に細かいものを毎日見られる方などがありましたが、このような場合は単焦点眼内レンズが向く代表です。
多焦点眼内レンズは、2重焦点では遠くと近く、3重焦点の場合は遠くと近くと中間のそれぞれの場所にピントが合います。
この特徴は日常生活においては非常に便利で、メガネを必要とせず生活されている方も実際多いです。
その反面、単焦点と比べると見え方のシャープさは若干落ちてしまいます。
多くの方にとってその差は小さく問題となりませんが、細かいことをされるような仕事の場合は単焦点でしっかりピントを合わせたほうが見やすく感じることが多いです。
またグレア、ハローといって、夜間に光が広がって見えたり輪がかかって見えたり、薄暗いところでみづらくなることが多焦点眼内レンズでは起きることがあります。
このため、夜間に車の運転を長くされる方や職業ドライバーの方は、何を重視するのか考えて眼内レンズを選択する必要があります。
また多焦点眼内レンズは、眼の状態によっては使用できない場合もあります。
緑内障や角膜の歪みがあるような場合は、かえって視力が出づらくなる場合があり注意が必要です。
円錐角膜などの不正乱視の場合は、ピンホール眼内レンズと言われる新しい眼内レンズが使用可能です。
▶EDOF(イードフ)眼内レンズ(焦点深度拡張型眼内レンズ)って?
最近、EDOF(イードフ)眼内レンズといって、多焦点眼内レンズでありながら、夜間視の問題を軽減し単焦点眼内レンズのように使える眼内レンズが登場しました。
しかし、通常の多焦点眼内レンズと比較すると近くの視力が出づらいので、普段のライフスタイルでどこの距離が重要なのかよく相談してから、レンズを決める必要があります。
現在のところ、様々な眼内レンズが出てきています。
患者さんからどれがいいんですか?
ネットで見てもいいことしか書いていないのでと相談を受けることがあります。
私は、全ての点でパーフェクトなものは今のところなく、それぞれ一長一短を有し、それが患者さんにうまくマッチするかどうかと考えています。
プレミアム白内障手術
最近プレミアム白内障手術は、より安全、確実な白内障手術に付加価値眼内レンズの使用を組み合わせた手術のことを言います。
多焦点眼内レンズが合う患者さんには多焦点眼内レンズやEDOF眼内レンズを使用します。
最近は、寿命の延長により白内障手術を受けてからの人生も以前よりずっと長くなっています。
このため、白内障世代の方でもスポーツや趣味や仕事など非常にアクティブに過ごされている方が多いように思います。
そのような方で、眼鏡に頼らず生活されたいという希望がある場合は、この手術を選択されるのがお勧めです。
白内障術後トラブルの相談
白内障術後トラブルの相談も受け付けています。
今までセカンドオピニオンなどで数多くの患者さんを診察させていただいた経験より、最良の結果が得られるように治療を行なっています。
これまでの経験上、主に以下のように相談は分類され、以下のように対応しています。
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眼内レンズの度数ずれ。レーザー手術やアドオン眼内レンズ、ICLでの矯正でずれを修正します。術後早期であれば眼内レンズの交換も可能です。
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眼内レンズの位置ずれ。水晶体の袋が弱っている可能性があります。ずれが大きい場合は眼内レンズを固定し直す手術の適応があります。
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手術後の視力不良。白内障手術がうまくいっていても、他に異常があると視力不良となる場合があります。原因を究明しそれに対して治療を行なっていきます。
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術後の眼の痛み。ドライアイや眼表面の神経が過敏になっている可能性があります。
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虹彩(ひとみ)の変形。白内障手術の際に虹彩が変形したり大きく広がって戻らなくなる状態です。虹彩付きコンタクトレンズや手術治療では瞳孔形成術などで治療します。
セミナー情報
現在、定期的に名古屋アイクリニックにてオンライン白内障手術・多焦点眼内レンズ説明会を開催しています。
説明会では、以下の流れに沿って説明させて頂きます。
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これまでのWeb相談室などで、白内障手術についてよくある相談についてお話しします。患者さんが術前、術後悩んでいることを共有して、勉強になればと思っています。
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眼内レンズの選び方について詳しく解説します。単焦点、多焦点眼内レンズの特徴や、実例を紹介しながら、それぞれを選択した際にどのような見え方になるのか解説します。
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私が行っている白内障手術の特徴について解説します。誤差を極力低減する方法、眼内レンズの選び方、術後サポートなどについてお話します。
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最後に質問コーナーを設けていますので、お気軽にご相談ください。
白内障手術を受ける予定の患者さんだけで無く、ご家族の方など、どなたでもお気軽に参加可能です。
ご希望の方は以下のリンクからzoom白内障手術説明会のお申し込みをお願いします。
また1時間のオンライン説明会では白内障について全てをお話出来ないので、以下の事前視聴ビデオで予習をお願いします。
白内障治療に関する講演活動
学会などで白内障手術に関連する講演に招待されることが多くなってきました。
特にレーザー白内障手術や多焦点眼内レンズ関連など新しい技術の講演が多いような印象です。
海外での講演も呼ばれたら、忙しくても積極的に行って交流をはかるようにしています。
日本の眼科における精度の高い白内障治療は、手術だけでなく術前、術後の検査、フォローアップも含め素晴らしいものがあると思っています。
そういった日本の医療の素晴らしさを、海外では伝えていきたいと思っています。
主な講演リスト
2019年4月
日本眼科学会総会 シンポジウム
「フェムトセカンドレーザー白内障の有効性」
2019年1月
CME symposium in Hong Kong, Innovative Technologies "Designed to Improve Outcomes in Cataract & Refractive, Optimizing cataract surgery outcomes with new technologies"
2018年7月
白内障学会総会
「フェムトセカンドレーザー白内障手術は標準治療になり得るか」
2018年6月
JSCRS学術総会 ランチョンセミナー
「新しいEDoF眼内レンズIC-8の特徴と臨床経験」
2017年7月
第6回大連医大国際眼科学会(中国大連市)シンポジウム
「Current and future perspectives of cataract surgery」
2017年6月
JSCRS学術総会 一般講演
「円錐角膜眼における眼内レンズ度数計算の検討」
JSCRS学術総会 シンポジウム
「フェムトセカンドレーザー白内障手術の実際」
2016年4月
日本眼科学会総会 シンポジウム
「フェムトセカンドレーザー白内障手術による眼組織変化」
2016年
JSCRSウィンターセミナー
「白内障手術 私の理想形」