ドライアイ・涙目の治療
原因を探求し、それに応じた治療を提供します。
ドライアイとは
ドライアイは様々な原因により、涙の状態が悪くなり、それによって乾燥感、異物感、痛みなどの症状が起こる病気です。
最近はスマートフォンの使用など日常生活で目を酷使することが多くなってきており、非常に多くの方がドライアイを患っています。
自覚症状が強い場合は、日常生活にも影響することがあります。
私のドライアイ外来では、以下に述べますように原因を究明して、それに対する治療方法を提案しています。
ドライアイの検査 ドライアイのタイプを見極める
ドライアイにはいくつかのタイプがあり以下がその代表です。
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水分分泌減少タイプ
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油分分泌減少タイプ
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摩擦亢進タイプ
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混合タイプ(上記の混合型)
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神経過敏タイプ
これらのタイプをしっかり診断することが治療においても需要となります。
水分分泌を測定するシルマー検査、眼表面の涙液安定性を調べる検査、眼表面の傷を調べる検査、涙液油層を検査するLipiview、DR-1検査、神経障害に対しては角膜痛覚検査などを行います。
ドライアイの治療 ドライアイのタイプ別治療
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水分分泌減少タイプ
まず、ファーストチョイスは点眼薬です。
日本で開発されたジクアスは非常に優れたドライアイ治療点眼薬で、眼表面から水分を分泌させる働きをもっています。
これでも改善しない場合は、涙点プラグがおすすめです。
涙点プラグは涙が鼻に流れていく0.5mm程度の小さな排出口にシリコンの蓋をする治療です。
現在の涙点プラグはデザインも非常に低刺激性となっており入っているかどうかもわからない程度です。
涙点プラグ治療は涙だけでなく、使用した点眼薬も眼の表面に滞留しやすくなりますので点眼薬の回数を減らす効果と点眼薬の効果を高める作用もあります。
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油分分泌減少タイプ
涙の成分に油の成分があると知らない方も多いと思います。
まぶたの縁にはマイボーム腺という油を分泌する脂腺がたくさん存在し、瞬きのたびに眼表面に油分を供給しています。
この油は、涙の蒸発を抑えて乾燥しないようにしています。
マイボーム腺は油の出口の部分が詰まったままだと、マイボーム腺そのものがなくなってしまいます。
治療では、まぶたを温めてマイボーム腺の開口部に詰まった油を圧迫して押し出し、分泌を促します。
また家でのケアも大切ですので、その指導も行なっています。
また、光エネルギーを使ったIPL治療も行っています。
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摩擦亢進タイプ
涙液そのものには異常がなくても、まぶたと眼表面の摩擦が増えることによってドライアイが起こることがあります。
代表的な病気には結膜弛緩症、上輪部角結膜炎、翼状片、リッドワイパー症候群などがあります。
基本的な治療としては、摩擦を減らすムチンを分泌させるジクアスやムコスタ点眼がファーストチョイスとなりますが、点眼でも改善しない場合や症状を繰り返す場合は手術治療を行う場合もあります。
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神経過敏タイプ
後述しています新しいタイプのドライアイを参照してください。
自己血清点眼治療
現在のドライアイの治療の限界点は、自分の涙を増やす方法が無いことです。
涙には他の目薬にない、ビタミン類、眼表面の傷を修復する増殖因子、神経の栄養因子などを含んでいます。
このため、非常に涙液分泌が少ない方(重症ドライアイ)は、どのドライアイ点眼薬を使用しても、涙点プラグを行っても効果が不十分な場合があります。
自己血清点眼は採血して採取した血液から血清を分離し、それを20%に希釈して使用します。
保存方法は3ヶ月冷凍保存可能で、1週間毎に融解させ使用します。
血清は涙に近い成分であるために、これまでの研究でも通常の点眼薬に比べてドライアイの改善効果が高いことが分かっています。
この治療の欠点としては、3ヶ月毎に採血が必要な事です。
IPL治療
(マイボーム腺機能不全に対する光エネルギー治療)
上で説明した、油分分泌減少タイプに対する新しい治療です。
まぶたの縁に光エネルギーを当てて、血流改善を起こすことによって、マイボーム腺の詰まりを解除します。
基本的な方法として、4回で1クールとなります。
この治療は、保険治療の対象外で自費診療となります。
名古屋アイクリニックで行っています。
ドライアイの治療の多くは点眼など補充治療が基本ですが、この治療は原因となるマイボーム腺の状態を根本的に改善出来ることが特徴です。
強い光が当たるので、患者さんは眼をシールドで保護して治療を行います。
シェーグレン症候群について
シェーグレン症候群は、目と口の乾燥(ドライアイとドライマウス)を主な症状とする病気です。
涙を作っている涙腺と唾液を作っている唾液腺が、炎症によって壊れてしまい、涙、唾液が出なくなります。
原因は、本来自分の体を守るはずの免疫系が暴走してしまい、自分の涙腺や唾液腺を攻撃して破壊してしまうことにあり、シェーグレン症候群は自己免疫疾患というくくりの病気のひとつです。
ドライアイは重症化することが多く、視力の低下を伴うことも多いです。
眼を開けているのが辛い、日常生活を送るのも大変と言われて受診される方も多く、かなり重点的な治療が必要になる事が多いです。
ドライアイの中では水分が不足するタイプに分類されます。
炎症を抑える治療と水分を増やす治療を同時に行います。
水分を増やす治療としては、軽い場合は点眼による補充やジクアスなど水分を分泌させる点眼液で十分ですが、重症化してくると涙点プラグを併用し、自分の涙や点眼した水分が外に逃げないようにします。
涙点プラグはどうしても脱落の問題が多いので、重症のシェーグレン症候群の場合は涙点閉鎖手術を行うこともあります。
また重症例では、この治療に加えて自己血清点眼も非常に有用です。
神経過敏性ドライアイ
~新しいタイプのドライアイ~
これまでのドライアイの考え方は、涙の状態が悪くなり(乾燥し)、眼の表面に傷ができることで、乾燥感を感じたり眼の痛みを感じるというものでした。
しかし、患者さんの中には眼の傷が軽度にも関わらず症状が強かったり、場合によっては全く傷がないにも関わらず、非常に重篤な症状の場合があります。
このような場合、簡単に言ってしまうと眼表面の神経もしくは中枢の神経が過敏になっていると考えられます。
このタイプのドライアイの治療は最近始まったばかりです。
現在のところ私の外来では、自己血清点眼による治療を行っています。
これは血清点眼に含まれる神経栄養因子の補充が目的です。
また点眼薬のみで改善が得られない場合は、慢性疼痛に効く内服薬を用いる場合もあります。
また角膜の知覚神経過敏である場合は、ボストンレンズも有効な治療法です。
これはまぶたによる摩擦や、乾燥による刺激から角膜をボストンレンズによって保護するという治療です。
このタイプのドライアイは実は特殊なタイプではなく、多くのドライアイの患者さんに関係しています。
ドライアイは以前から、症状と所見(眼の表面の傷など)の関連が低いと言われています。
これは多かれ少なかれ、眼表面もしくは中枢の神経がどう感じるかが患者さん毎に異なっているという事を示しています。
ドライアイ 普段からできる予防方法
ドライアイは慢性的な病気です。
このため、普段からのセルフケアが重要です。
現代社会はどうしても眼を酷使しがちですが、パソコン作業などモニターを凝視する仕事の場合は、定期的に眼を休めることが重要です。
最近はお昼休みにもずっとスマホを見ている方がありますが、ドライアイの方は要注意です。
お昼休みこそ眼を休めてドライアイのケアをしましょう。
自宅では、温罨法といって瞼を温める治療がドライアイには有効です。根気よく毎日続けることで、ドライアイが改善していきます。
最後に、心の健康に気をつけましょう。
涙の分泌は自律神経の影響を強く受けています。
精神的なストレスが続くとドライアイになることがあります。
普段からストレスを溜めない生活を心がけましょう。
涙目の治療
涙が多すぎて困る状態を流涙症と言います。
涙が少なすぎるドライアイに比較すると軽視されがちですが、実際涙が多すぎると、常にハンカチなどで拭いていないといけなし、瞬きとともにぼやけて見えることもあり、患者さんは非常に困っている方が多いです。
症状のため、人前に出づらくなってしまったりすることもあり、日常生活を送る上でも問題となります。
涙は、涙腺で産生されて、眼の表面に放出されます。
その後、上下のまぶたの縁を伝って内側(鼻側に)流れ、鼻側の涙点という小さい穴から細い管に流れていき、最終的には鼻腔へ流れていきます。
点眼薬を使った後に、味を感じたりするのは、涙道を通って涙が鼻まで流れていくからです。
涙が多すぎる原因は、涙がたくさん作られていることよりも、この涙の流れ道の異常があることが多いです。
涙の流れ道の異常で、眼の表面に異常がある代表格が、結膜弛緩症です。
眼の表面を覆っている結膜がまぶたの縁を占拠してしまうために涙目になってしまいます。
眼から鼻へと繋がる道の異常の代表が鼻涙管閉塞です。
この病気に対しては、最近非常に良い方法が開発されています。
涙道内視鏡という直径0.9mmの内視鏡を使用して、閉塞部位を解除し、その後再癒着防止のためにしばらく涙管チューブを留置します。
内視鏡は日本製で、この分野では日本の技術は素晴らしいと思います。
流涙症治療に関しては現在、名古屋アイクリニックで行っています。涙道内視鏡手術は片眼10分から15分程度の手術で治療が可能です。